秋冷やくわらんと入る喫茶店 若杉朋哉

「秋冷(しゅうれい)」は「冷やか」の傍題。秋になって肌に直接覚える冷気、冷やかさのこと。見るもの聞くもの触れるものにつけてふと感じる秋の気配。

掲句は喫茶店の扉を押した時に鳴る「くわらん」というドアベルの音が、秋の冷気を感じさせたとの句意。「くわらん」という擬音語が、やや古風な店のドアベルの音を読者の耳に蘇らせる。ドアベルが鳴った後、店内には再び静かさが戻る。客は作者を含めて二、三人ほどだろうか。作者の胸中の微かな孤心も感じられる。深まりゆく秋の最中の日常の一コマ。『俳句』2024年11月号。


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