「青田」は稲が生長して、まだ穂が出ない状態。一面の田を覆うその瑞々しい青さは、本格的な夏の到来を思わせる。
掲句は一面の青田を前にして、風に波立つ稲の葉擦れの音に耳を澄ませているところだろう。「呱々(ここ)のこゑ」は生まれたばかりの赤ん坊の泣き声。一方、「壮年のこゑ」は作者自身の「こゑ」だろうか。風に騒立つ青田の瑞々しさと、日々生長する稲の逞しさを同時に感じさせる措辞。自らを「壮年」と断じた作者の老い難き詩情が爽やかだ。『郭公』2024年9月号。
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