蟻臭きやはらかき手を嗅ぎにけり 岸本尚毅

「蟻」はハチ目アリ科の昆虫の総称。女王蟻、働き蟻などからなる高度な社会生活を営む。よく見かけるのは、暑い夏の盛りに地表を歩き回る姿だ。子供に身近な昆虫でもある。

掲句は、外遊びをしていた幼い子供の可憐な姿が彷彿する作品。地面にしゃがみこんで蟻と遊んでいた幼子の手についていた蟻の匂い。この句で表現しているのはただそれだけのことだが、一読思い浮かべる情景には豊かな広がりがある。「省略」という俳句の骨法の力を、改めて再認識させられる一句。『俳句』2024年9月号。


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