身を鎧ふもの外したる涼しさよ 和田順子

季語「涼し」は、暑い夏の一日の中で、思いがけず覚える涼しさをいう。

掲句の「身を鎧(よろ)ふもの」は何だろう。「鎧う」は鎧 を着たり、甲冑 (かっちゅう) などをつけて武装することから、より抽象的に何かを身にまとう意に意味を広げてきたので、この句で作者が身に鎧っているものも、社会的地位や俳人としての立場、世間体への顧慮などさまざまに解釈できる。いずれにしても衣服など目に見えるものに限らないことは確かだ。作者は、日頃身に鎧っているものを外してありのままの自分に還って涼んでいるのだ。俳句には具象的に描き出して成功する場合と、抽象的に表現して成功する場合があるが、掲句は後者の一例。『俳壇』2024年9月号。


コメントを残す