「山梔子(くちなし)」はアカネ科の常緑低木で、夏に六弁の杯形の香気ある花をつける。咲き始めは雪白色だが、萎む頃には淡黄色に変わる。
掲句は花の終り頃の「山梔子」を詠んだ作品。「山梔子」は咲き始めこそ雪白で清らかな印象があるが、たちまち色褪せてしまう。その色の変化を、俳句では「褪せる」「錆びる」などと表現することが多いが、この句は「山梔子」の色彩には触れずに、「山梔子」を吹き抜ける風に焦点を絞った。「風かわく」との措辞は、咲き闌けた「山梔子」の、色を和らげながら咲き続けている様を的確に浮かび上がらせる。『俳句』2024年8月号。