山滴るトンネルに胎貫かれ 西宮舞

「山滴る」は、緑の木々におおわれた夏の山の、万物の生命力が満ち溢れて滴るような瑞々しさをいう。

掲句は、その夏山がトンネルで胎(たい)を貫かれているという。胎は母体内の子を宿すところで、この句の場合比喩として用いられているのだが、トンネルの貫く山の深部を端的に胎と表現したところは、女性ならではの感性。現在南アルプスなどで行われているリニア新幹線のトンネル工事など思い浮かべてはどうだろう。『俳壇』2024年8月号。


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