麦飯を嚙み口中に風の記憶 奥坂まや

「麦飯」は米に大麦を混ぜて炊いたもの。戦後の食糧難の時代には、米の不足を補うために麦飯を炊いたというが、今日では、貧困から麦飯を食べることはなく、健康志向から、あるいは麦とろなど特に麦飯と相性のよい献立の中で好んで食べられるようになった。

掲句の「麦飯」には懐旧の味わいがある。作者にとって「麦飯」は、父母や故郷など過去の大切な記憶と結びついている。それを作者は「口中に風の記憶」と鮮烈に表現した。懐旧は詩のモチーフとしては目新しいものではないが、そのモチーフを包み込む表現に独自性のある作品だ。『俳句』2024年7月号。


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