手の甲に皺の山脈日脚伸ぶ 矢島渚男

「日脚伸ぶ」は、年も明けて、少しずつ日が長くなること。1月の半ばを過ぎると、日暮れが遅くなり、また、日差しが暖かくなって、一歩ずつ春が近づいていることを実感する。

掲句は自らの老いを、諧謔味を交えて詠んだ作品。手の甲の皺を「山脈」というのはいささか大仰だが、作者は、自らの身体に現れる老いを戯画化して愉しんでいるのだろう。自身の老いをさえ句材にしてしまうところに、作者の図太い作家魂が見える。『俳句』2024年6月号。


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