「残る鴨」は春になっても何らかの理由で日本にとどまっている鴨のこと。帰る時期を待っている場合もあるし、傷ついたりして日本にとどまる場合もあるだろう。
掲句は、春になっても残っている二羽の鴨を眺めていての作品。カルガモなどの留鳥であれば、繁殖期を迎える春から夏にかけてオスメスの番いが力を合わせて巣作りや子育てをするが、何らかの事情で残っている鴨たちは、二羽いても詰まらなそうに、また、お互いに関心なさそうに水に浮かんでいるというのだ。軽い感興の句だが、「残る鴨」のあわれさ、哀しさをどことなく感じさせる情景だ。『俳句四季』2024年6月号。