春の虹鉛筆の芯やはらかし 和久田隆子

虹は夏に多く見ることができ、単に「虹」といえば夏の季語だが、春の驟雨の後などにも見られることがある。日差しが弱いため、「春の虹」は現れてもすぐに消えてしまうことが多い。

掲句は、机上で手にした鉛筆の芯が柔らかいとの一瞬の感受と、「春の虹」と取り合わせに妙味がある作品。淡々と現れてすぐ消えてしまう「春の虹」を窓辺から眺め、束の間の華やぎと物足りなさを感じながら、作者は鉛筆でものを書き続けているのだろう。一句全体が柔らかな春の情感に包み込まれる。『俳壇』2024年6月号。


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