波音のどこかに遅日ひそみをり 星野高士

「遅日」は春の日の暮れが遅いことをいう。実際には夏至が一番日暮れが遅いのだが、冬の日暮れが早かったので、春の暮れの遅さがひとしお印象深く感じられる。

春の夕暮れ時、「遅日」の感じを起こさせるものは、目に映るもの耳に聞こえるものなどさまざまあるが、掲句は「波音」の中に「遅日」を感じ取った。感じ取ったことを表現しただけの単明な句柄の作品だが、ゆったりとした「波音」の繰り返しの中に「遅日」を把握した感性は鋭い。『俳句』2024年5月号。


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