鯥五郎はハゼ科の水陸両生魚で、日本での分布は有明海と八代海。干潟の泥底に棲み、干潮時には胸鰭で歩き回る。ムツゴロウの蒲焼は地元の郷土料理の一つというが、近年は生息数が減少している。
掲句は朧夜の干潟を跳ねて行く鯥五郎を描き出す。春は潮の干満の差が激しいが、今は引き潮の時で、干潟の朧に潤んだ月明かりの中を、一匹の鯥五郎が跳ね回っている。朧夜の湿り気を帯びた温かい夜気は、その鯥五郎も作者をも包み込んでいる。鯥五郎を見守る作者の温かいまなざしが思われる作品だ。『鷹柱』所収。
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