舞台から見る客席は冬の海 藤井あかり

「冬の海」は寒風や荒波が押し寄せ荒涼としている。日本海側では、雪雲が低く垂れ込め、暗澹とした光景となる。太平洋側はからりと明るいが、うねりが大きく荒々しい。

掲句は舞台から客席を見たときの一瞬の感受を素早く一句に仕立てた作品。明るく照らし出された舞台から見ると、真っ暗の客席は荒涼とした夜の海に感じられたのだ。「冬の海」は比喩として使われているに過ぎないが、舞台上の作者が感じている孤独感や暗く静まり返った客席の印象は、この直喩により読者にヴィヴィッドに伝わってくる。『俳句界』2024年4月号。


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