春霙降りはやみつつ山隠す 

「春霙」は春になってから降る霙(みぞれ)のこと。関東地方南部では、冬よりも春になってから雪が降ることが多く、それも水気の多い牡丹雪や霙に見舞われることが多い。

掲句は前年2月に亡くなった飯田龍太を偲び、春の霙の彼方に消えてゆく山影を眺めていたときの作品。薄明るい空からとめどなく降ってくる霙を眺めていると、時間の観念がいつしか消え、茫漠たる空間にひとり取り残されたような錯覚を覚えた。飯田龍太には、平成2年4月から4年6月の『雲母』終刊まで同誌作品欄で選を受けた。当時は全くの初心者で、さして交わる機会もないまま終わってしまった。平成20年作。『春霙』所収。

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