濤音のどすんとありし雛かな 千葉晧史

雛(ひいな)は3月の節句に飾る雛人形のこと。段飾りであれば、内裏雛や官女雛、屏風、雪洞などが華やかに賑々しく飾られる。

掲句は「雛」と「濤音」を取り合わせただけの単明な作品。雛が飾ってある家の壁を隔てて、間近に濤(なみ)がどすんと轟いたという。「濤」というのだから、穏やかな波ではなく、大海から寄せてくる荒天の大波だろう。作品には何の情況説明もないが、一読自ずから強風が吹くなどして海が荒れ、岸に荒波が打ち寄せていること、雛が飾ってある海辺の家のひと間のしんとした静けさなどを思い浮かべることができる。単純化は作句の骨法の一つであり、この句でも、省略や単純化が効果を上げている。『俳句四季』2024年3月号。


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