春は最も鳥の目につく季節。草木が萌えはじめ、春の明るい光が野山に満ちてくると、いろいろな鳥が姿を見せるようになる。そんな中で鶫(つぐみ)は秋に群れをなして日本に渡ってくる鳥の一つで、春が深まる頃まで日本に留まる。単に「鶫」といえば秋の季語であり、冬や春に見かける鶫を詠む場合は、「冬鶫」「春鶫」などと表現することが多い。
掲句は麗らかな日が降り注ぐ畑で土中の虫などを漁っている鶫を詠んだ作品。鶫は冬鳥として日本に渡ってくるが、すっかり馴染んだ日本の地に溶け込むようにして日々を過ごす春の鶫には、捨てがたい趣がある。その声は、残り少ない日本での日々を惜しんでいるようでもある。平成31年作。