近寄れば近寄つて来る春の馬 甲斐遊糸

「春の馬」は春の野に放たれて、のびのびと遊ぶ馬のこと。「春駒」ともいう。春は仔馬や一歳馬・二歳馬などの若駒が目につく季節でもある。

掲句は春の野に遊ぶ「春の馬」を詠んだ作品。野に放たれたばかりの若い馬を想像したい。「近寄れば近寄つてくる」との措辞に、人を疑うことを知らないその馬の初心(うぶ)な人懐こさが表れている。人と馬との関係の温かさが、折から野を吹く柔らかい春風に包まれる。『俳句』2024年2月号。


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