恋ふ恋ふと鳴く丹頂の氷りけり 長谷川櫂

「鶴」は、秋にシベリア方面から日本に渡り、冬を日本で過ごすことから冬の季語。北海道に生息している「丹頂」は留鳥だが、「鶴」の傍題として同様に冬の季語になっている。また、「凍鶴」は、鶴が厳しい寒さに凍って動かないように見えるさまを表す。

掲句は、寒気の中で鳴き合う丹頂の白い息が見えてくるような作品。「恋ふ恋ふ」はコウコウであり丹頂の鳴き声を表す擬音語だが、「恋ふ」との表記は、つがいになった雌雄が空に向かって鳴き合う姿を想像させる。季節はまだ求愛期、営巣期には間のある厳寒の最中。「恋ふ恋ふ」には、寒気の中で春の到来を待つ丹頂の命の切実さが表れている。『俳句』2024年1月号。


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