「雁風呂(がんぶろ)」は、雁が北へ帰ったあと、海岸に落ちている木片を拾い、それを薪にして焚いた風呂のこと。木片は雁が渡りの途中海上で休むために必要としたもので、残された木片は雁が死んだ数であるとして供養のために風呂をたてたという。東北外が浜の風習という。
掲句は「雁風呂」という季語から発想した作品。「雁風呂」は北辺の地の習俗で、死んだ雁を供養する意味合いがあるが、作者は、雁に限らず、人や生きとし生けるものの死に思いを広げた。「死とは」と一般化した表現ぶりだが、作者の胸中には、死してもあの世で生き続けている大切な人の面影があるのだろう。『俳句四季』2024年2月号。