深呼吸して春山を肺の内 髙柳克弘

春の山は明るい光と温かな空気に包まれて、ものの命に溢れている。冬の間、眠っていたものたちが一斉に目覚めて活動を始める。

掲句は、「春山」を眼前にして、深々と胸に空気を吸い込んだときの感触を句にしたもの。命あるものたちが活動する「春山」が丸ごと肺腑の中に収まったとの表現からは、春を迎えた喜びが実感として伝わってくる。「虚に居て実を行う」という芭蕉の言葉も思い起こされる。『俳壇』2024年2月号。


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