鵙は、繁殖期が過ぎて秋になると、縄張りを主張して高い梢などで鋭い鳴き声を上げる。その声は澄んだ大気によく透る。秋の到来を感じさせる鳴き声だ。
掲句は「戰」の文字に口の字が二つあるとの、文字上の気づきを述べながら、戦争の絶えないこの地球上の現実に対する、作者の嘆きをそこはかとなく感じさせる作品。戦争を憤り、戦禍の惨状を嘆いても、そのストレートな表出だけでは文学作品にならないことは、実作者なら誰でも承知していることだ。この句は、あからさまな主観や感情の表出を避けながら、戦争というこの世の不条理に無関心ではいられない作者の心の内を覗かせている。鵙の無心の鳴き声が救いになっているようにも思える。『俳句』2023年12月号。