雲ひとつなし柚子坊と目が合ひて 陽美保子

芋虫の中でも揚羽蝶の幼虫はユズ、カラタチなどの柑橘類の葉を食べるので柚子坊ともいう。初め黒色で、成長すると緑色になる。

掲句は柚子坊と目が合ったという、ただそれだけのことを言いながら、秋晴れの清々しい空の下での生き物同士の交感を描いた作品。柚子坊には確かに黒い斑点のような目が二つある。柚子坊がその時人間をどのように認識したのかは問うまい。人間と柚子坊という二つの生き物が目を合わせて挨拶を交わしたのだ。『俳壇』2023年12月号。


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