残暑しばし手毎に料れ瓜茄子 芭蕉 元禄2年旧暦7月20日、金沢の犀川のほとりにあった斎藤一泉の松玄庵に招かれて作った発句。『西の雲』には「松玄庵閑会即興」との前書きがある。当日半歌仙を巻いたという。「残暑しばし」は残暑の中に感じられる涼しさを言外に含んでいる措辞。それが庵主一泉への挨拶になっている。
秋涼し手毎にむけや瓜茄子 芭蕉 『おくのほそ道』に載った最終形。「ある草庵に誘はれて」との前書きがある。採りたての瓜や茄子をもてなされた喜びや心の弾み、庵主や参会者への親愛感が、「むけや」との呼びかけに表れている。「残暑しばし」と「秋涼し」の優劣は一読明らかだ。当日はまだ暑さが残っていたのだろうが、「残暑しばし」では庵主への挨拶の意やその場の寛いだ雰囲気が十分には表れない。