空谷に唖唖とこゑ出すからす瓜 有澤榠樝

烏瓜(からすうり)は蔓性多年草で林や藪にみられる。実は晩秋の頃、緑色から朱赤色に熟れる。

掲句の「空谷(くうこく)」は人影のない寂しい谷のこと。空谷にひとり真っ赤に熟れている烏瓜が、「唖亜(ああ)」とカラスのような声を出したという。全くの幻想の作だが、晩秋の頃枯れ急ぐ谷にぽつんと目も鮮やかに熟れている烏瓜の姿が見えてくる。俊敏なウィットを感じさせる作品だ。『俳句四季』2023年11月号。


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