開きたる扇の上の東山 伊藤伊那男

俳句で「扇」といえば、あおいで涼を取るためのもの。竹や木を骨にして、紙、絹等を張って涼し気な色彩をほどこしたものが一般的だ。

掲句は、旅中持ち歩いている扇を、涼をとるために開いたところだろう。扇を開いた瞬間、その上に眼前の東山が緑滴らんばかり。東山は京都の東に位置する温和な山々の連なりだ。夏の京都の自然美を代表する東山を詠み込んで、旅中の作者の心の弾みの感じ取れる一句。『俳壇』2023年11月号。


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