あなたふと木の下闇も日の光 芭蕉 元禄2年4月1日日光東照宮に参詣した折の作で、同行した曾良による『曾良書留』に見える。陽暦では5月中旬の初夏に当たる。小暗い木の下闇にまで神君の恩沢が及ぶという神君礼賛の寓意があらわだ。真蹟懐紙には上五「あらたふと」との句形もある。
あらたふと青葉若葉の日の光 芭蕉 『おくのほそ道』ではこの形に改められた。芭蕉が、当日、青葉若葉に降り注ぐ初夏の陽光のきらめきに目を奪われたであろうことは、想像に難くない。それが日光の神域への賛美にもなっている。日光には古くから二荒神社があり、また、密教の霊地であった。旅先で直接経験した感動がこの推敲に生かされている。もちろん、日光大権現の恩沢も、日の光の中に含まれる。