弁慶の笈をも飾れ紙幟 芭蕉 元禄2年旧暦5月2日、『おくのほそ道』旅中の芭蕉一行は飯坂の医王寺に佐藤庄司元治一族の旧跡を訪ねた。この句は、『曾良本おくのほそ道』に記されている初案。「紙幟」は、端午の節句に立てる紙製の幟(夏季)。男児の将来を祝う端午の節句に、武勇で聞こえた弁慶の笈を紙幟とともに飾れと呼びかけたもの。『曾良随行日記』には「寺ニハ判官殿笈、弁慶書シ経ナド有由。系図モ有由」とあって、実際には話に聞いただけで、見ていないことが分かる。
笈も太刀も五月に飾れ紙幟 芭蕉 この改作は、『おくのほそ道』の地の文と合わせて後年なされたと思われる。すなわち、「寺に入りて茶を乞へば、ここに義経の太刀、弁慶が笈を留めて什物とす」との前文に対応して「(弁慶の)笈も(義経の)太刀も」とした。また、改案で加えた「五月」(さつき)の語は句の情調を明るくして効果的だ。この句は「紙幟」「五月」の季重なりだが、両者が並列ではなく、主季語を含む「五月に飾れ」の措辞が「笈」「太刀」「紙幟」の三つを束ねているから、季重なりが気にならない。