町消えて残る祠や泡立草 永瀬十悟

泡立草とひと口に言っても、秋の麒麟草とも呼ばれる可憐な黄花を咲かせる草のほか、北アメリカ原産の荒れ地に群生する背高泡立草も含まれる。

掲句の泡立草は荒地に猛々しく生える背高泡立草の方だろう。「や」の切れ字を使った伝統的な句形だが、「町消えて」の上五の措辞から思い浮かぶのは、東日本大震災の被災地だ。被災して一瞬のうちに町が消え去り、残された荒地に小さな祠が一つ立っていたという。空想や誇張を排した実直な句柄だが、泡立草が非情な被災地の光景を彷彿させる。『俳句』2023年11月号。


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