芭蕉の推敲(8)

五月雨をあつめて涼し最上川 芭蕉                              5月29日、大石田の髙野一栄亭における四吟歌仙の発句。「あつめて涼し」は、眼前を流れ下る最上川の涼感を賞して、一栄への挨拶の心を込めた。一栄の脇句は、                      岸にほたるをつなぐ舟杭 一栄                              一栄宅は最上川に臨んだ船宿で、裏座敷から最上川の景色が眺められたのだ。

さみだれを集て早し最上川 芭蕉                            「涼し」を「早し」に推敲した改作で、『おくのほそ道』にはこの形で載っている。「閑かさや」の句と同様、『猿蓑』編纂の後『おくのほそ道』決定稿の染筆までの間になされた推敲だ。この推敲の背景には、実際に舟に乗って最上川を下った芭蕉の経験がある。直接経験の感動が、「早し」の一語に集約されている。たった一字の推敲が句の成否を決めた例。

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