何もかも見て晩秋の大きな木 武藤紀子

晩秋は、三秋(初秋・仲秋・晩秋)の末の月のことで、陰暦9月(現行の歴では10月頃)。山野の草木が色づき始め、日々の生活の中で、冬が近づく気配が感じられるようになってくる。

掲句は眼前の大木を擬人化して、晩秋の季節感を感じさせる作品だ。「大きな木」は、樹齢を重ねた欅や樟などを想定したい。晩秋の透徹した空気の中で、眼前の大木がこの世の何もかもを見ているように感じられたという。通常は見る対象である木が、逆にこの世を見ているという捉え方が面白い。『俳句四季』2023年10月号。


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