秋の声は、澄んだ空気の中に繊細になった聴覚の捉えた秋の気配。葉擦れの音、水音、虫の音などであってもいいが、心の中で聴きとめる心象的な声のこともある。
掲句は寺院などの回廊に佇んで秋の気配に耳を澄ませているところだろう。回廊は、建物や中庭などを取り囲むように、途中で折れ曲がりながら続く長い屋根付廊下のこと。私は宮島の厳島神社を思い浮かべたが、どこであっても構わない。いずれにしても、歴史のある寺院などの回廊を想定したい。回廊の吹き抜けて来る風の音を「秋のこゑ」と捉えたところに、俳人としての直感の働きが見える。『俳句四季』2023年10月号。