疵のない空の残りし広島忌 小川紫翠

広島忌は原爆忌の傍題。昭和20年8月6日、広島市に原子爆弾が投下された。人類に対する初めての核兵器の使用であった。

掲句は、街の真上の雲一つない晴れわたった「疵(きず)のない空」に言及することによって、原爆投下の惨状を浮かび上がらせる。多くの犠牲者が出、市街が破壊しつくされる中で、空だけが無疵のまま残ったというのだ。平明な表現の向こうに平和への願いを込めた作品。『俳句四季』2023年10月号。


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