滴りは、崖や岩の裂け目から滴々とこぼれ落ちたり、苔をつたって落ちる清冽な点滴のことで、涼味を誘う。
掲句は、滴りの水滴が一枚の羊歯(しだ)を打って揺らしているさまを描く。表現しているのはただそれだけだが、素材と表現の単純化により、夏の真昼の一抹の涼気と静寂を表し得ている。単純化は、俳句の大事な骨法の一つ。『俳句』2023年10月号。
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