秋の日の莞爾と街に川波に 舘野豊

秋の日は、秋の一日にも、秋の太陽の光にもいう。秋の前半は依然として強い光で地上を照り付けていた太陽も、秋が深まるにつれて徐々に高度を下げ、日差しが柔らかになってくる。

掲句は秋の日差しを「莞爾(かんじ)と」と形容したことがポイント。「莞爾」は、にっこりと笑うさま、ほほえむさまを表す。夏の頃の烈日が、ようやく人に優しい笑みを投げかける「秋の日」になったことへの安堵感が窺える。同じ意味だが、〈にっこり笑う〉と表現したのでは俗に落ちるところだ。令和3年作。『時の影』所収。


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