考へる玉となりては滴れり 藤野律子

滴りは、崖や岩膚の裂け目から滴々と零れ落ちたり、苔を伝い落ちる清冽な点滴のことで、涼感を誘うことから夏の季語になっている。

掲句は、滴りを「考える玉」と把握したところが面白い。ゆっくりと膨らんでは落ちる雫を凝視しての発想だろう。滴々と落ちる滴りの雫が、思慮深げな光を放っているように見えてきたのだ。しばらくの間、夏の暑さを忘れることができそうだ。『俳句界』2023年9月号。


コメントを残す