風のこゑ地のこゑとどく稲の花 井上康明

稲が穂に綿毛のような花をつけるのは初秋の頃。まだ暑さが厳しいが、秋の気配も少しずつ感じられてくる。開花時間は2、3時間で、その間に風によって受粉が行われる。人目につかない密やかな光景だが、その年の米の出来高と直結する植物の営みだ。

掲句は、「稲の花」のそうした風情が活かされている作品。真昼間に稲を吹く風は、夏から秋への確かな季(とき)の歩みを感じさせる。風のこゑや地のこゑには、豊作への人々の祈りも込められているようだ。『俳句』2023年9月号。


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