剥きたての銀杏のごと月碧し 小川軽舟

銀杏ぎんなんはイチョウの種子のこと。晩秋の頃、イチョウの実は熟して落ちる。多肉質の外皮を除いて、白くて固い木質の殻を割り、中の胚・胚乳を食べる。そのまま焼いてもいいし、茶碗蒸しに入れるのも美味しい。

銀杏も秋の季語だが、掲句は月の句。眼前の澄み切った月を「剥きたての銀杏」に譬えたところが新鮮だ。月を眺めていて、やや青みがった銀杏の美しい色合いを思い起こしたのは、作者にも銀杏を剝いて料理した経験があるからだろう。日常のどのような経験も俳句の肥やしになることを、この句を読んで改めて認識する。『俳句』2023年9月号。


コメントを残す