屍の傷む八月来りけり 今瀬剛一

「八月」は8月8日頃に立秋を迎えることから秋の季語とされている。依然として暑さが厳しい日々が続き、原爆忌、終戦日、お盆と、物故者や祖先を偲ぶ機会も多い。相変わらず残暑は厳しいが、徐々に秋の到来を感じることも増えてくる。

掲句は、八月の印象を「屍(しかばね)が傷む」季節と大胆に表現した。原爆投下や空襲の惨状は、直接経験していなくても、写真や映像によって脳裏に焼き付いている人は多いだろう。八月の極暑の中で傷んでいく屍のイメージは、生々しく読む者に迫って来る。『俳壇』2023年9月号。


コメントを残す