「秋の声」「秋の聲(こえ)」は、ものさびしい秋の情趣を感じさせる物音のこと。秋は空気が澄み、遠くの物音もよく聞こえるようになるとともに、聴覚も繊細になり、かすかな物音にも秋の気配を感じ、秋の到来を実感する。
掲句の「秋の聲」は実際の物音というよりは、作者の「心のあら野」の立てる心象的な声だ。具体的に何の声かなどとは問うまい。詩人、俳人としての表現の道は、荒野の中のひと筋の道を辿るようなものだ。そのような道を独り歩んでいる作者の、心の中の声を聞き留めたい。『俳句四季』2023年8月号。
kknmsgr
Δ