蜘蛛は、蝶や蜂、蝉などとともに、身近にいる生き物の一つだが、昆虫類とは別の仲間に属し、ダニやサソリなどに近い生き物だという。捕食する昆虫が見つかるところなら、家の中だろうとどこにでも出没する。
掲句の蜘蛛は、屋外であれば鬱蒼と茂った樹から、家の中であれば天井からテーブルの上などに降りてきた一匹だろう。今眼前に降りてきた蜘蛛と同じように、言葉も自らに降りて来てくれないものだろうか、とは俳句にたずさわるものとしての願望の表現だ。詩を授かる瞬間は、天恵とも天啓ともいう。会心の言葉は、中々詩人に降りて来てくれないものなのだ。『俳壇』2023年7月号。