種馬におし黙りたる男かな 野中亮介

「種馬」は 種つけ用の牡馬で、「獣交む」(春季)の傍題。家畜の馬や牛は、野生の獣らに比べると発情期は不明瞭だが、春に種付けが行われることが多い。

掲句の種馬は、競走馬の繁殖のための牡馬だろう。種馬の多くは現役時代に活躍した馬で、種付け時には多額の種付け料がかかるというが、その世話をしたり、種付けのために馬を誘導したり、人工的に管理された中で種付けを行ったりと、日々行われる仕事は地味ものだ。作者はその作業に当たっている一人の朴直な男に目を止めた。〈山賤のおとがひ閉づる葎かな 芭蕉〉を思わせる風趣のある作品だ。『俳壇』2023年7月号。


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