殺戮の武器みなしづか蠅叩 長谷川櫂

蠅叩は蠅を打ち殺す道具。身辺から蠅がいなくなり、日常生活で蠅叩を目にすることは少なくなった。原始的な道具だが、蠅を殺すための道具であることに変わりはない。

掲句の「殺戮の武器」で読者が真っ先に思い浮かべるのは、ミサイルや戦車や銃などではないだろうか。或いは、時代劇に出てくる太刀や弓矢など。読者によっては原子爆弾を思い浮かべるかも知れない。なるほどこれらの武器は、使用していないときはいずれも静かだ。使おうという人の意思と行動があって、初めて「殺戮の武器」になる。掲句は、蠅叩もこれらの武器と同じだと言っている。だが、「殺戮の武器」という大上段に構えた措辞と簡便な「蠅叩」の間にある余りに大きな落差に、読者は立ち止まらずを得ないだろう。そこに、作者が込めようとした痛烈なイロニーが匂い立つ。『俳句』2023年7月号。


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