花の夜といえば、昼間見た爛漫と咲き盛る花(桜)の姿を心の中で思い浮かべながら過ごす静かな夜が思われる。既に万朶の花は夜闇に沈んでいるのだが、その華やかな姿は眼裏に残っている。
掲句は、夜、花の余韻に浸っている作者の、自らの身体に対する遠近感覚を詠んでいる。土不踏(つちふまず)は、身体の中で最も目につかない部分であり、顔や手に比べると普段意識することも少ないが、乗り物が発達した現代でも、人の活動は自らの二本の足が頼みであることに、今も昔も変わりはない。日頃頼みにしている土不踏のことを思い浮かべるところに、花見の後の作者の心地よい疲れが思われる。『俳句』2023年6月号。