枝垂桜の開花は、ソメイヨシノと大体同じ3月下旬から4月頃。葉に先だって細く垂れた枝に淡紅色の花をつける。樹齢600年の秩父清雲寺の枝垂桜のように大木になると、花の盛りは見ごたえがある。
掲句は、他の同時発表句から、夫君の入院・手術に際しての作品と分かるが、一句を単独で読んでも、爛漫と咲き盛る「しだれざくら」の花明かりの中で、昏睡から覚めない人のただならぬ病状が浮かび上がってくる作品だ。昏睡状態にあった人がその後どうなったのかという現実の時の流れとは関わりなく、作中の人は永久に昏々と眠り続け、枝垂桜は咲き続ける。『俳句』2023年6月号。