花衣脱ぐや救急研修医 黒田千賀子

「花衣(はなごろも)」は花見に行く時に女性が着る晴れ着。花見に豪華な花見小袖を着ることが流行した時代もあったが、現在では、花見に特別の装いをする女性を目にすることは稀になった。それでも、「花衣」というと、往時の華やかな風俗を連想するし、着飾った女性の晴れやかな表情も思い浮かぶ。

掲句は、花見の時に着ていた晴れ着を脱いで、救急研修医に戻る女性を詠む。「脱ぐや」の切れには、花見の楽しみから研修医の日常に戻る当該女性の心の切り替えの素早さが感じ取れ、それは現代を生きる人間の特色でもあるだろう。いっときの楽しみから救急研修医に戻ると、直ぐに多忙な日常が待っているのだ。『俳句界』令和5年6月号。


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