朧は、春の夜、湿り気を含んであたたかく和んだ夜気の中で、ものの輪郭や音や色がやわらかく模糊としていること。朧夜の気配は、戸外だけでなく、夜気の入り込む家の中でも感じ取れるだろう。
掲句は、朧夜を歩いていて、思わぬところに段差があり、思わず躓きそうになったとの句意。戸外の公園などを歩いている場面でもいいが、私は、夜中にトイレに起った場面を想像した。躓きそうになった段差が、朧夜のふち(縁)にあるとの把握が面白い。日常誰もが経験する内容だが、季語「朧」が効いている。『俳句』2023年6月号。
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