囀りや明日渡る島沖に見て  上野一孝

囀りは、鳥たちが求愛や縄張りを知らせる鳴き声。冬の間は藪などにひそんで人目につかなかった鳥たちが、春になると、人目をはばからず木のてっぺんなどに姿を現し、美しい声で囀りはじめる。

掲句は、明日渡る予定の島を沖に見ながら、これから目に触れるであろう島の景物をあれこれ思い描いていると、身ほとりの樹頭で鳥が囀り始めたとの句意。明日を疑わないような明るい鳥の声が、旅中の作者を包む。春の伸びやかな旅情と微かな懈怠が感じられる作品だ。『俳句』2023年6月号。


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