五月来る書かざるままの祝婚歌 五十嵐秀彦

祝婚歌は、古代ギリシャ以来発展した文学形式の一つで、新郎新婦を褒め称え、その結婚を祝す歌。日本で祝婚歌といえば、吉野弘の同名の詩を思い起こす人も多いだろう。

掲句は、その祝婚歌が書かれないままだという。その理由が書き手の側にあるのか、それとも新郎新婦の側にあるのかなどの説明は全くなされずに、事実だけが読者に投げ掛けられる。折から一年で最も麗しい季節である5月。祝婚歌を書くには最も相応しい季節だ。そのことが、読む者の想像力を一層刺激する。『文藝春秋』6月号。


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