「蝌蚪(かと)」は、蛙の幼生。お玉杓子ともいう。卵から孵った後、暫くの間は無数にかたまっているが、成長に従い、尾や手足を使って泳ぎ出す。
掲句の「蝌蚪の国」は、水底を覗き込んだとき、無数の蝌蚪が「国」と呼べるような一つの社会を形成しているように見えることをいう。その「蝌蚪の国」も、我が影の中に納まってしまう程の小さな存在に過ぎない。そして、人間も、天地を司る神の目から見たら、この上なく微小な存在である。作者にとって、この世に存在するということの不思議さを感得した一瞬だったのだろう。『俳句』2023年6月号。