「鶯」(うぐいす)は日本の三鳴鳥の一つで、春になると山から里に現れて美しい声で鳴くため、古来から、春を告げる鳥として親しまれてきた。警戒心が強く、羽の色も地味なため、声が聞こえても姿を見る機会は少ない。鳴き声としては、ホーホケキョと聞きなす囀りのほか、ケキョケキョケキョと続けざまに鳴く「谷渡り」といわれるものがある。「谷渡り」は繁殖期のオスが出す声の一つで、メスに危険を知らせたり侵入者や外敵を威嚇する意味をもつという。
掲句は、釣果を求めないとの句意に加えて、そのゆったりとした声調が、渓流釣りの醍醐味を感じさせる作品。釣り場を定めて糸を垂れると、折から聞こえる「鶯の谷渡り」。清流の響きや森の匂いに溶け込んで過ごす釣りの一日に、作者の心は伸び伸びと解放されるのだろう。『俳句』2023年6月号。